日時:2023年2月18日(土)14時~16時
開催方法:オンライン(zoom)
テーマ:東南アジアからの日本留学動向 ~ミャンマー人留学生の動向を中心に~
講師:鳥越麻美様(岡山大学日本留学情報センター)
2022年度の中国・地区研究会は、2023年2月18日にzoomを使用して開催された。当初は8名の方が参加を希望されていたが、当日の参加者は5名であった。
講師の鳥越様は2017年から岡山大学の国際部にてミャンマーから日本へ留学を希望する学生へ助言や支援活動をされている。日本は以前から、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、特にインドネシアやマレーシアから多くの留学生を受け入れてきたが、これに加えてミャンマーからの留学生を増やすことが目的である。2019年には、同大学にて文部科学省支援の「日本留学海外拠点連携推進事業(東南アジア地域)」を受託し、日本への留学者数を5年間で1.5倍にすることを目標に事業を進めてきた。対象諸国もミャンマー以外に、バンコク、ラオス、カンボジアなどASEAN全域に拡大した。同年、すでに留学者数が30万人に達したとのことだったが、2020年の新型コロナウィルス感染拡大により留学者はいったん減少した。
昨今、東南アジアでは、日本への留学者数が減る国、増える国と様々であるが、ミャンマーでは日本への留学熱が劇的に高まっているという。この背景には、2011年より民政化へと舵を切り、国内の教育環境も整えられていたミャンマーであったが、2021年2月の軍事クーデターによる社会情勢が不安定なこと、またコロナ禍による教育機関の一時閉鎖により、若者が海外へ留学や就業の機会を求めていることがあげられる。
留学の傾向として、実務に直接結びつくビジネスや工学系分野を希望する若者が多いが、実際は人文・社会科学系の留学が主流となる。工学系へは数学や理科に重点が置かれるが、ミャンマーでは近年12年制へ変更されつつあるが、これまでの基礎教育期間は小学校5年間、中学校4年間、高等学校2年間の合計11年間であったため、日本と教育のギャップがあるという。また、日本で留学生活を送る中で一番の障壁は、言語の違いである。そのため、ASEANからの留学生のうち、日本留学を選択するのはわずか16%、55%は英語圏へ留学する。
東南アジアからの留学生を日本に受け入れる課題は多様である。渡日前、そして在学中の日本語学習支援はもちろん、日本の文化・習慣のオリエンテーションの必要性があげられた。また、ミャンマーでの経済状況の悪化により、留学生の85%が「一部奨学金が必要」もしくは「全額必要」としているが、渡日前に獲得できる奨学金は少ないという。
鳥越様のお話を通して、日本政府の後援もあり、ASEAN加盟諸国から想像以上に多くの学生が日本に留学していること、そして彼らが日本社会に合わせるために準備が必要なことを学んだ。同時に留学生が日本社会に合わせるのではなく、日本が多文化共生化する社会へかわることも望まれると感じた。講演後は30分ほどディスカッションタイムとなったが、参加者からは留学生の卒業率や卒業後の就職状況などの質問が飛び交い、有意義な会となった。鳥越様にはお忙しい中、ミャンマー人留学生について、現地の社会的背景と日本留学最新情報、日本社会の外国人受け入れについて情報提供いただき感謝いたします。
報告者:江藤由香里