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全国の地区別研究会のご紹介

Introduction of regional study groups in Japan

関西・中部地区研究会

2022年度第1回 関西・中部地区研究会のお知らせ

『「縁側」知の生成に向けて』の第8章と第9章の執筆者の方々に各章の内容を詳しくお話しいただきます。非会員の方の参加も歓迎いたします。皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2023年3月12日(日)14:00~16:00

会場:椙山女学園大学 星が丘キャンパス 国際コミュニケーション学部棟4階416室

〒464-8662 名古屋市千種区星が丘元町17番3号

(地下鉄東山線「星が丘」下車、6番出口より徒歩5分)

アクセスマップ<https://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/access/>

キャンパスマップ<https://www.sugiyama-u.ac.jp/univ/campus/map/hoshigaoka/>

開催形式:対面のみ

参加費:無料

参加申込:以下のフォームにて3月5日(日)までにお申し込みください。

<https://forms.gle/CtbTSD1539v1oixo6>

当日参加も可能ですが、人数把握のため、事前申込みにご協力ください。

プログラム

[講演1]鳥塚あゆち

「アンデス高地における人間・家畜・自然の関わり合いと牧畜文化の生成」

本研究会では、学会創設20周年記念事業出版物『「縁側」知の生成に向けて:多文化関係学の潜在力』に収載された拙稿「人間・家畜・自然の関わり合いから生成される文化:アンデス高地で家畜とともに生きる人々から学ぶ」の内容を中心に、アンデス牧畜民と彼らが飼養するリャマやアルパカなどの家畜、標高4500mの自然環境の関わり合いのプロセスについて報告する。マルチスピーシーズ民族誌の思考法を援用して、人間を含む多様な種がアクターとして存在し、互いに関わり合うことで「アンデス牧畜文化」が生成されていることを、論考では割愛したアンデス高地での人々の生活も紹介しながら発表したい。また、関わり合いの具体的事例は、文化人類学のフィールドワークによって得られたデータであることから、偶発的に得られた情報をどのように多文化関係学のなかで活かしてゆけるのか、参加者とともに議論してみたい。

[講演2]出口朋美・小坂貴志

「多文化社会の対話的成り立ち――両義・多声的ラップのリリック内容分析を通して」

本研究では、多文化関係学の視座をさらに広げる目的で、これまであまり扱われていなかった若者の音楽カルチャーであるラップを取り上げる。ラップの音楽表現では、ラッパー自身の出身地や活動場所の表明、コミュニティにおける自らの立ち位置を表現することが重要視されている(木本、2009)。それ故に、ラップシーンは(日本)社会における「多文化関係」の中でも、特に若者文化がおのずと展開される現場となっている。

前半では、理論的参照枠組みとなるカーニヴァル論と対話論を紹介したのち(桑野、2020;2011)、各論の主要概念に沿ってラップシーンの特徴を、ローズ(1994)などを引用しながら論じる。カーニヴァル論と対話論との融合は、理論的参照枠組みに関する独創的な試みとなっている。

後半では、ラップ作品のリリック分析を通して、多文化社会の対話的成り立ちを論じる。具体的には、フェミニズム的視点を持つZoom Gals、日本に韓国からの「移民」と自らを位置づけ、そのことについて語るラップ作品を多く生み出しているMoment Joon、移民が多く暮らす静岡県磐田市の団地から出現した日系ブラジル人グループGreen Kids、ドイツに移住しアジア人として人種差別を受けた経験から”Hey, Nazi”という作品を発表した日系人Blumio、日系アメリカ人で英語話者にも関わらず “Wakarimasen”という作品で視聴者の固定観念を揺さぶるMiyachiなどの作品・インタビュー記事を取り上げる。

今後の日本社会を担っていく若者世代に強い影響を与える音楽・芸術カルチャーを考察の対象にすることで、今後の多文化関係学が研究対象を広げ、創造的なテーマ設定のさらなる潜在的可能性を本研究では示唆したい。

参考文献

Rose, T. (1994). Black Noise. Wesleyan University Press. (ローズ・T. 新田啓子訳 (2009). ブラックノイズ みすず書房)

木本玲一 (2009). グローバリゼーションと音楽文化―日本のラップ・ミュージック― 勁草書房

桑野隆 (2020). バフチン―カーニヴァル・対話・笑い― 平凡社

桑野隆 (2021). 生きることとしてのダイアローグ―バフチン対話思想のエセンス― 岩波書店

講師略歴:

鳥塚あゆち(Ayuchi Toritsuka)

関西外国語大学外国語学部准教授。専門は文化人類学、ラテンアメリカ地域研究。とくに、南米ペルーのアンデス高地に暮らすリャマ・アルパカ牧畜民を対象に、国家と先住民共同体との関わり、共同体における共同性、牧民社会の変容について研究を行ってきた。現在は、人間と動物との関係、先住民社会へのグローバル化の影響、先住民の在来知をテーマに調査・研究を進めている。

出口朋美(Tomomi Deguchi)

近畿大学法学部法律学科教養・基礎教育部門准教授。主要論文は「実践共同体としての大学寮における留学生と日本人学生の対人関係」(多文化関係学第5巻)、「国際ボランティア参加者の学びのプロセス:相互作用と活動への参加モードの変化から」(異文化コミュニケーション第20巻)など。

小坂貴志(Takashi Kosaka)

神田外語大学外国語学部国際コミュニケーション学科教授。主要著書は「現代対話学入門」(明石書店)、「異文化コミュニケーションのA to Z」、「異文化対話論入門」(以上、研究社)、主要論文は「文化的生成過程を媒介する「声」の役割 : 応答性、異質性、関係性を読み解く」(多文化関係学第7巻)など。

お問い合わせ先:

多文化関係学会関西・中部地区研究会 矢元貴美(大阪大学大学院人文学研究科)

multicultural.kansaichubu<AT>gmail.com <AT>を@にしてください。