日 時:2021年5月8日(土)13:00~15:00
方 法:Zoom
講師①:李 鳳 氏(北海商科大学)
テーマ:「原爆をめぐる異文化コミュニケーションの可能性:日本人の心理と行動を中心に」
講師②:遠山 淳 氏(桃山学院大学 名誉教授)
テーマ:「二重信仰と両立型コミュニケーション~長崎潜伏キリシタンにみる」
第1回北海道・東北地区研究会をオンラインで開催し、お二人の先生にご発表を頂きました。お一人目は李鳳先生(北海商科大学)による「日韓異文化コミュニケーションにおける文化的相違」で、日本も韓国も、最も多い異文化間コミュニケーションを行う相手であるという事を踏まえ、両者の多文化社会の特徴と、異文化コミュニケーションの類似点と共通点についての分析を行われました。前半では先行研究で明らかになっている「韓国と日本を比較すると、日本の方が不確実性を回避する傾向が強いため、ともに仕事をする際お互いの進め方に疑問を抱いてしまう」など、事前に理解しておくだけで円滑な関係構築につながるのではないかという比較軸が複数あるということをご提示いただきました。後半は、先行研究で明らかになっている日本と韓国の文化的相違の特質が、若い世代(特にMZ世代)において継承されている点、また変化している点について分析するという今後のご研究構想を伺うことができました。
お二人目は遠山淳先生(桃山学院大学名誉教授)に「二重信仰と両立型コミュニケーショ ~長崎潜伏キリシタンにみる」というテーマでご講演を頂きました。このテーマについて先生は、10年かけてご研究をした結果、その言葉すらあまり適切でないという印象を持たれたという所からはじまり、自分の視座が西洋のキリスト教側なのか日本文化の方にあるのか、宗教史として、隠れキリシタンということばを見ているのか。自分とは何者かを問われるのではないかというお話から、「本当に隠れていたのか という当時におけるキリシタンのふるまい、特に仏教徒の対峙の仕方が従来理解されているものとは異なり、土着化したことで、(同じく外国から流入して土着化した)仏教との二重性がみられるということを、歴史資料を踏まえて論じられました。また、国内のキリシタンだけを特異なものとして捉えるだけでは見えないものがあり、日本における(あるいは世界における)新しい宗教を受け入れる際に生じる宗教間の軋轢(弾圧)という歴史学の視点から見る必要性を指摘されました。総括として、潜伏キリシタンと呼ばれる人々は、両立型の人間がキリスト教・仏教どちら側も長く習慣化し、その生き方に取り入れるという存在だったのではないかという考察を行われました。
また最後に遠山先生から、日韓のコミュニケーションの文化的相違というテーマとも関連付け、どの視座からみているかということ(立場・あるいは学問的領域)に意識的になる必要があり、例えば国家間比較であれば、各国の研究者が自文化について客観的な資料を提示しあうことで、異文化交流史、異文化交流に関わる研究が深まるのではないかという示唆を頂きました。オンラインという形で討議が十分にできない等の制約もありましたが、他地区の会員にご参加を頂けるという成果もございました。また、今回、北海道・東北地区ご所属と分かっている方へのみ、事前に発表募集をいたしました。今後、地区研究会活性化を図れればと考えておりますので、ご進学・就職・異動等で新たに北海道・東北地区に移られたという方のご連絡もお待ちしております(次回の地区研究会企画の際、ご 発表募集のお知らせをお送りします)。
報告者:馬場 智子(岩手大学)