日時: 2019年6月22日(土) 14:00~16:00
場所: 藤女子大学 16条キャンパス 374教室
話題提供者: 廣田 廣達 氏
講演テーマ「中国人から見た日本人 ─円滑なコミュニケーションを見据えて─」
レスポンダント: 李 鳳 氏 (北海商科大学 准教授)
久米 昭元 氏(元立教大学 教授)
2019年6月22日(土) 14:00~16:00に、2019年度の多文化関係学会 北海道・東北地区例会を開催いたしました。今回は、前半部で講演者に話題提供を頂き、後半はパネルディスカッションの形式で実施いたしました。
【ご講演内容】
華僑の家庭に生まれた廣田氏に中国での駐在経験等を踏まえて、日本人・日本に対する
中国人の見方を紹介していただきました。
ご講演の中で特に印象に残ったのは、「中国の人は…」と一括りにできない事はもちろんではあるものの、世代によって、物事の見方に大きく影響を受けた事件や事柄があり、その背景を理解する事で、コミュニケーションがしやすくなる、という事でした。特に文革や一人っ子政策などは世界的にも大きな影響を与えていますが、現在中国の方と接する際にも、これらの出来事を正しく理解しておく事が不可欠であると示していただきました。
また、廣田氏が日中メディアを比較検討された結果、両国とも、メディアはどうしても極端さを求める傾向にあり、実際の人々の意見とは一致していないと分析されたのは非常に説得力がありました。
また、QRコード決済の普及がなかなか進まない日本と、全世代、あらゆる地域で迅速に普及した中国という、新しい技術に対する適応の速度の違いから「なぜ不便さを我慢するのだろう」という疑問を抱かれている事や、日本が売りにしているものと少し違う部分が着目されている(医療ツーリズム等)事など、日本が世界にどう見られているかを多面的に知ることの重要性を示していただきました。
【パネルディスカッション】
後半は、パネルディスカッション方式で廣田氏と李氏、久米氏による議論が行われました。李氏からは、メディアの極端さという点については韓国も類似の点が見られ、実際の人々は報道ほどネガティブなイメージがない事、ただし、それを利用する政治家がいるのは事実である、という分析が示されました。久米氏からは、これまでのご研究を踏まえて、日中米で小グループでのディスカッションを行う実験の結果、日本ではまとめ役になる人が出ず、他者との討論もあまり起こらなかったが、中国とアメリカはすぐリーダー役が決まり、めいめいが意見を述べて議論するという、近い形が見られたということを示され、決定の早さ(対応の早さ)についてこのようなコミュニケーションの形式の違いも影響しているのではないかという意見が述べられました。
その他、日本と中国の他者との付き合い方の違い、具体的には、中国の方は親族以外でも【親族に等しい存在】がいて、相手にとってその存在になると一つ違う付き合い方になる(日本にはそれを一言で言い表す言葉が見当たらないが、「自己人」と呼ぶ)という等、人間関係の層の違いについても活発な議論が交わされました。
今回の研究会には、学会員のみならず、20名以上の学生さんが出席されました。会場となった藤女子大学では中国での研修も設定されており、その参加予定者が大勢出席していたそうです。自分たちが関わっていく海外に対して、実際の声を聴いて理解したいという積極的な姿勢を感じました。
報告者:馬場 智子(岩手大学)