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全国の地区別研究会のご紹介

Introduction of regional study groups in Japan

関東地区研究会

2011年度第2回 関東地区研究会報告

場所: 立教大学太刀川会館1階第1会議室

話題提供者(1):角和昌浩氏(昭和シェル石油㈱、東京大学公共政策大学院特任教授)(Masahiro Kakuwa, Showa Shell Sekiyu K.K,, Project Professor of University of Tokyo Graduate School)
発表テーマ:「エネルギー問題への入口」 “Introduction to Energy Issues”

エネルギー供給・消費システムは、石炭・原油など原料としての一次エネルギー、発電所や石油精製所などの転換セクター、電気や石油製品など消費される二次エネルギーのから成り立っている。一次エネルギー・システムと転換セクターは長期的に形成、運用されるため、急激な方向転換は難しい。例えば、あるエネルギーに関する政策が形成されてから実際にプラントが建設され、そのエネルギーが利用され、全エネルギーの1%のシェアを得るのに30年かかると言われている。しかし、二次エネルギーは消費者の意向で変える余地大きい。このことは、昨年の夏に大幅な節電が実施されたことや、消費者の中に節電に関する意識が強くなってきていることからも理解できるであろう。
ところで、陶芸用の窯で使う燃料は、その社会でアクセスが容易な二次エネルギーが使用される。日本も含めた先進国では電気やLNG、中国だったら石炭、バーレーンであれば重油と言った具合である。日本は先進的な燃料を使えるにもかかわらず、日本人には薪焼きの手触り感を愛でる感性がある。このような感性を持つ日本人であれば、311以降の二次エネルギーの選択も良い選択ができるのではなかろうか。
(舘山 丈太郎, JICA)

話題提供者(2):関口礼子氏 (大妻女子大学を経て「日本の社会研究所」開催)(Established,the Japanese Society Research Institute after Otsuma University)
発表テーマ:「カナダにおける多文化主義とその後の変化」“Multiculturalism in Canada and Its Recent Change”

関口氏が多文化主義の研究のために滞在していた1985年頃のカナダは、一言語による一文化であるアメリカ(人種のるつぼだが、英語圏)とは異なり、英語・英国系対仏語・フランス系の英・仏二言語・二文化を共存させる「二文化社会」が中心的な考え方であった。しかしながら、その後、先住民族、ウクライナなどの他のマイノリティの権利主張が相次ぎ、各エスニックグループが共存する「個別的多文化主義」に傾斜し、言語・教育・文化振興についても、グループ毎に予算化される時期が続いた。ただし、2000年頃からは、多文化の個別的併存ではなく、自文化とは異なる「異文化」への理解と寛容が重要であると説く「統一的多文化主義」が台頭し、“building bridge” (異文化との橋渡し)を重視するこの考え方が、カナダでは現在でも主流となっている。
レクチャーの後半では、最新事例としてアルバータ州の“Framework for Student Learning in 2011”が取り上げられ、専門学校と大学入試に必要とされる英語資格の違い、学校の独自性、オンライン教材の浸透状況などが議論された。この新しい学校教育の枠組みで日本がカナダから学ぶべき点として、1.画一的、鵜呑みではない思考、2.一過性の学業でなく、生涯学習・仕事・生活全体の充実、3.社会・テクノロジーの激変への適応意識、4.ローカルとグローバル問題の不可分性の認識だとの解説がなされた。老齢化や人口減少の加速、移民の増大など、これまで以上に多文化共生と異文化への対応が求められる日本にとり、上記指摘は、大学や高等教育という領域のみならず、企業・個人・家族・社会という軸におけるあらゆる文化・生活領域に応用可能な非常に説得力のある実践的ディスクールだと思われる。
(天野 芳彦 慶應義塾大学社会学研究科)