場所: 九州大学・伊都キャンパス比文・言文教育研究棟第8ゼミ室
テーマ:外国人「生活者」のための日本語教育と多文化理解教育の現状と課題―福岡の実践から見えてくること―
Current Situation and Problems involving Education for Learning Japanese Language and Understanding Multiculturalism for Foreigners―Focus on Fukuoka―
第一部:
(1)「地域「生活者」と大学をつなぐ-外国人留学生の家族への日本語教育を通して-」
話題提供者:新井克之(Arai Katsuyuki)、季江静(Jiangjing JI)、緒方尚美(Ogata Naomi)、李秀珍(Lee Soojin)、永嶋洋一(Nagashima Yoichi)(九州大学大学院比較社会文化学府院生「留学生の家族のための日本語教室」実践チーム)・松永典子(Matsunaga Noriko)(九州大学大学院比較社会文化研究院)
(2)「日本文化塾を通して-学生によるキャンパス国際交流の形-」
話題提供者:永嶋洋一(Nagashima Yoichi)(九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻院生)
第二部: 「ホームでもアウェイでもないフェアな場所-生活者として暮らすムスリムのための日本語講座の実践から見えたこと-」
話題提供者:深江新太郎(Fukae Shintaro)、妹川幸代(Imokawa Sachiyo) (共に愛和外語学院、平成23年度文化庁委託事業 「生活者としての」外国人のための日本語教育事業「ムスリムのためのサバイバル日本語」担当講師)
本研究会では、昨年から今年にかけて福岡で実施された外国人「生活者」のための日本語教育の実践報告がなされた。第一部は、九州大学伊都キャンパス周辺に暮らす外国人留学生の家族のための日本語教室と、同大学に通う留学生のニーズに応えるため、学生が主催した日本事情教室の実践報告である。いずれも、近年になって留学生を中心とした外国人「生活者」が増加傾向にある福岡において、従来の手段ではフォローできない学習者に対する一つの試みであった。会場に集まったのは主に日本語学校や大学、地域日本語教室の日本語教育関係者であったためか、その授業内容のより詳しい実態に関する質問、さらに日本語教育の理念に関する質問や議論が飛び交い、予定より大幅に時間を延長することになった。第二部は、現在、福岡に暮らすイスラム教の外国人「生活者」に対する試みである。厳密な戒律に従って暮らす彼らは食材を買うにも難儀する。女性は美容院にも通えず、彼らの子供たちをイスラムの戒律に配慮した学校に通わせる必要がある。豊かな多文化共生社会の実現のためには、彼らが日本の習慣や文化を学ぶと同時に、日本社会のほうにも国際理解教育の必要性がある、という提案がなされた。
日本語学習者やそのニーズが多様化している現況においては、まずは各地域で点在している情報や課題を共有する必要がある。そのために九州大学の学生が立ち上げた任意団体「にほんご楽(たの)しかネットワーク」の設立発表が本研究会においてなされた。今後、福岡地域で産官学の連携が進み、多文化化、多様化していく現実に対して、垣根を超えたさらなる新たな試みが実施されていくことが期待される。
文責:新井克之(九州大学大学院比較社会文化学府院生、にほんご楽(たの)しかネットワーク代表)