MENU

全国の地区別研究会のご紹介

Introduction of regional study groups in Japan

中国・四国地区研究会

2008年度 中国・四国地区研究会報告

場所: 伊予市生涯研修センター「さざなみ館」

話題提供者(1): 宮脇和人(愛媛大学大学院)
「伊予市のびっくり鯨騒動と鯨塚」

話題提供者(2):西浦慎介・都子大雅・大塚秀一(愛媛大学学生)
紙芝居「くじらのはか」、くじらクイズ、「西海地域における鯨塚と鯨文化」

日本列島には、各地に鯨塚が残されている。今回の中国・四国地区研究会は、鯨塚がある伊予市湊町で実施した。文化的資源として、鯨塚を再確認し、研究発表後に、湊神社にある鯨塚を見学し、鯨肉の試食会もおこなった。地元の小学生を招待し、紙芝居によって、鯨塚がどのような理由で建てられたのかという点をわかりやすく説明した。小学生を中心にほぼ60名の参加があった。
前半は、宮脇が「伊予市のびっくり鯨騒動と鯨塚」というテーマで、1909年に伊予郡中沖にやってきた巨大鯨の大捕り物と鯨塚建立の経緯について説明した。宮脇は、地元の古老から、詳しく聞き取った内容を忠実に子供たちに伝えた。子供たちの幾人かは、次の世代に、宮脇から聞いた話を伝えていくであろう。言い伝えが伝承されていくプロセスを実感することができた。ちなみに今回、宮脇が報告した部分は、宮脇・細川著「鯨塚からみえてくる日本人の心」(農林統計出版、2008年)の第4章に相当する。宮脇は、話のポイントを次の3点にまとめた。①伊予市の鯨騒動で、郡中の若者たちが捕った鯨は、コク鯨であった。このコククジラは瀬戸内海で生まれたものかもしれない。②下関の捕鯨会社から来た男と、郡中の若者たちが協力したおかげで、鯨をしとめることができた。③地域の人々は、捕った鯨資源を利用したあと、お寺と神社の両方で手厚く鯨をまつった。
後半は、西浦、都子、大塚らが、紙芝居「くじらのはか」、クジラクイズ、パネル展示によって、鯨文化、鯨の基礎的知識について、子供たちにわかりやすく、説明した。紙芝居は、学生たちが自ら創作した。15の場面設定で、絵と台詞をみんなで議論して作成した。ほんのさわりの部分を紹介しよう。「むかしむかいし、魚がとれなくて困っていた漁村がありました。きびしい冬を目前にひかえた、村びとの生活はとても苦しいものでした。ある朝、村びとが1頭の鯨を見つけます。そして・・・」。終わったあと、会場から大きな拍手がおこりました。紙芝居をみて、子供たちは、何かを感じ取ったようでした。学生らは、鯨塚を建てるという行為を紙芝居のストーリーに仕立てて、子供たちに、「自然物にたいする畏敬の念」「いただきますの感謝の念」をわかりやすく伝えようとした。彼らのメッセージが子供たちに十分伝わった。なお、研究会の内容については、愛媛新聞と読売新聞が後日、報道してくれた。

文責: 細川隆雄(愛媛大学)