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全国の地区別研究会のご紹介

Introduction of regional study groups in Japan

九州地区研究会

2008年度第1回 九州地区研究会報告

会場: 九州大学 六本松地区キャンパス

話題提供は2件の話題提供者によって行われた。1件は、韓国人と日本人のコミュニケーション距離の理解について、各文化間でスキンシップの許容度を比較し、日韓の異文化理解を促進する目的で、明確なデータ分析のもとに話題が提供された。それに対しもう1件は、日本人の「働き方研究所」の所長の紹介及び著書の紹介を経て、「日本人の働き方研究所」の趣旨、現在まで得られた結果を、働くことの意味を見つめ直すきっかけとして、様々な映像とともに話題提供がなされた。

第1部: 「コミュニケーション距離と異文化理解―スキンシップ許容度の日韓比較を中心に―」
話題提供者:
九州大学大学院言語文化研究院 曺 美庚氏

コミュニケーションにおけるスキンシップの許容度について、最もスキンシップの頻度が多いと考えられる大学生を対象にした日韓それぞれの数量データをもとに文化相違の提示が行われた。データは其々、同性・異性のカテゴリー、親・兄弟・親友、親しい先後輩、普通の友人、知り合い程度の人のカテゴリー、またスキンシップ上の露出度によって手、腕、肩などのカテゴリーに分類され、多面的な分析のもとに提示された。また、実例としての映像や写真が具体的な例として示された結果、どのカテゴリーにおいても、日本人のスキンシップは、韓国人に比べて、自然に許容できる傾向が低いことがわかった。
質疑応答(例)
Q:年齢や性別の相違があっても、韓国ではスキンシップが許容されるのか。
A:韓国でもやはり、目上の人でかつ異性間でのスキンシップは、消極的になる。
Q:日本のデータで、幼少からスキンシップが激減しているのを見ると、育児のやり方そのものが変わってきたのか。また、韓国と異なったやり方であるのか。
A:データでの証明はされていないが、日本では昔に比べるとスキンシップが減少したという話をよく聞く。それはしばしば、戦後の「大人になる教育」が変化したからではないかといわれるが、きっかけはまだ不明である。また、韓国では、スキンシップと成熟度を関連させた教育は、日本ほどなされていないので、大人になってもスキンシップをすることは不自然なことではない、と考えられている。

第2部: 「臨床心理地域援助の現状と課題―日本人の『働き方研究』―」
話題提供者:
九州大学 留学生センター 高松里氏

留学生センターのカウンセラーである話題提供者の紹介や、著作を紹介しながら、自身の活動内容が紹介され、話題提供者が病気の誤診を機会に考えた「働き方」について、「働き方研究所」の趣旨とともに報告がなされた。体験談や写真、生き方についての引用句を用い、さらに「悪魔の言葉シリーズ」や「バーンアウト」のプロセスなど、現在の生活について、多様に考察するきっかけが提供された報告であった。
質疑応答(例)
Q:「働き方研究所」は誰でも入れるのか。
A:所長に参加の旨を伝え、登録をすれば誰でも会員になれる。
Q:「バーンアウト」の予防法はあるか。どのようなことをすればよいか。
A:予防法は人や状況によって様々だが、「ことばに表すことが出来ない不安」であっても、似たような境遇の人や、話を聞いてくれる場所を持っておくことが出来れば、不安が緩和されることが多い。また、周囲にそのような人を見つけても、周囲の人が倒れるのを予防することは難しいが、後遺症を考えると、出来れば早い段階で自分の振る舞いについて考えるきっかけを持つのが望ましい。
今回、多文化関係学会の研究会には初めて参加させていただいた。形式は、普段の学会と同様に発表者の報告、質疑応答という内容だったにも関わらず、質問や意見が自由にやり取りできる研究会の雰囲気が、とても心地良く感じた。また、参加されている方それぞれの異文化体験や、異文化に対する視点や考え方を身近に感じ、それについて意見交換をする場として、貴重な議論の場であった。

文責:合澤由夏(九州大学院生)