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全国の地区別研究会のご紹介

Introduction of regional study groups in Japan

関西・中部地区研究会

2007年度第2回 関西地区研究会報告

デイサービス・ハナマダン東九条

「在日コリアン高齢者デイサービスへのフィールドワーク:デイサービス・ハナマダン東九条(NPO法人京都コリアン生活センター・エルファ)訪問」

「『ハナマダン』はハングルで『1つの広場』を意味する言葉で、『エルファ』はうれしい時や楽しい時にでる感嘆符なのです。悲しい時にでる『アイゴー』の反対語です」と、理事長である鄭禧淳氏の説明からフィールドワークは始まった。京都コリアン生活センター・エルファは、異国で苦労を重ねた同胞高齢者に穏やかな晩年を提供するために、「自分の生活史を持って生活できる場所」を京都の東九条――映画「パッチギ」の舞台となった地区――に設立された。1口500円の寄付を1400人(日本人も含めて)から集めた資金をもとにエレベーター付き2階建てのこぢんまりとしたバリアフリーの建物が、在日コリアン高齢者の方々が集まってくる広場となった。メンバーは曜日によって代わるが、毎日20数名が集まって、言葉に不自由を感じることなく、ハングルの歌やコリアン料理を満喫する数時間をここで過ごす。
金曜日にデイサービスに通ってこられる在日コリアン高齢者の方々と私達のためにリクリエーションを担当してくれたのは、コリア語と日本語ができるスタッフであった。ボールを投げ返しながら数を数えるゲームを全員で行った。「ハナ」「ニ」「スリー」と、コリア語、日本語、英語(異文化コミュニケーション学会会員のアメリカ人2名が参加したため)の3ヶ国語を交えての交流は、在日コリアン高齢者の方々には少し複雑であったようであったが、笑顔と笑いは途切れることはなかった。2つのチームに分かれてボールを運ぶ競争では、負けたチームが「アリラン」を歌い、勝ったチームもその歌に合わせて踊った。最後には、自然に隣同士がお互いに手をつなぎあい、アリランの大合唱となった。「エルファは、このような時に自然に出てくる感嘆符なのだなー」と実感したのは、参加者の中でも私だけではなかったと思う。最後には、一人ひとり手を取り合いながら、「元気でね」「また会いましょう」と言葉を交わした。
「昔の苦しいことを忘れて、今日いっぱい楽しめて、明日目が開かなかったらいい」「エルファの歌で逝くから」という在日コリアン高齢者の方々の言葉には、異国で老いを迎える人々のアイゴーの気持ちが込められている。それだからこそ、「私達のことを知って欲しい」と、私達を含め多くの訪問者との交流を深めようとしているエルファの在日コリアン高齢者の方々の姿勢に、多文化関係学を学ぶ者として畏敬の念を覚えた。
文責:金本伊津子(桃山学院大学)